平時における対策は無理であっても、せめて、土砂崩れが発生した箇所に絞った、災害時の復旧支援への補助を・・・。
民地内で発生した土砂崩れの制度の狭間の問題を取り上げます。
写真は11月17日のものです。
10月25日の大雨による土砂崩れの傷跡が今なお残っています。
底部の土嚢の設置は自身でされたものの、二次被害の発生を防止する応急処置としてのブルーシート貼りなどはできず、斜面はむき出しのままです。素人では難しいと思います。
ブルーシートや土嚢などの資材については、家屋等の損壊と同様に、市町村から支給を受けることができるものですが、応急処置の作業は、個人の財産の問題として、原則自分で行うこととされています。
そして、被災箇所の復旧も、同様に、原則個人の財産の問題として自身によるとされています。
被害の程度こそ様々ですが、緑区には他にも同様の境遇の人がいます。各地にもたくさんいるはずです。
大雨からもうすぐ1か月が経過しようとしています。
このブルーシートや土嚢等の資材の支給を受けられることすら知らずに困っている人がいます。
崩落箇所の復旧に関しては、国の制度により出来ることがあります。
土木管轄の急傾斜地崩壊対策事業や、農林管轄の治山事業などに該当する場合です。
また、激甚災害に指定されれば事業メニューが更に広がりますが、現在のところ25日の大雨は指定されていません。
急傾斜地崩壊対策事業と治山事業については、それぞれ制度目的は異なりますが、斜面への安全対策を実施する点では共通しています。
詳細は割愛しますが、総じていずれの制度も、個人の財産を根底に、斜面の角度・高さ、対象住戸の個数など、公益性を満たす一定の要件が求められ、かつ、市町村によりますが、個人にも費用の一部負担を求めることが一般的となっています。
なお、これらとは別に、市町村で独自の事業を設けているところもあるようです。
今回、土砂崩れの被害を受けた方の中には、土砂災害発生危険個所として指定され、以前から、土木管轄の急傾斜地崩壊対策事業の実施を要望されていた方もいました。
周辺の集落でこの事業が実施されていたからでしたが、住戸の位置で戸数要件を満たさなかったことから対象外となっていました。
そこで、農林管轄の治山事業での要望もされましたが、こちらの要件も満たしませんでした。
もっとも、仮に、県の小規模治山事業であれば、要件に該当する可能性がありました。
この事業は、市町村が実施する小規模治山事業に対し、費用の3分の1を県が単独で補助するメニューです。
しかし、政令市への移行の際の協定により、千葉市は対象外となっています。
今回、緑区は、土砂崩れにより亡くなった方がいます。
その現場の1つですが、すぐ隣りの斜面は、政令市への移行前の平成元年度に、現在の小規模治山事業に相当する事業が実施され、斜面対策が行われています。
現在のところ、市には小規模治山事業に相当する事業や、独自の事業はありません。
今回の災害では、道路や自治体の土地が絡んでいる場合などを除き、基本的には、個人の財産の問題として自力での復旧となってしまいます。
加えて、現状では、自力の復旧が出来ず、危険性から事実上居住が困難な場合であったとしても、物理的な損壊が無い限りは、建物の全壊・半壊等の判断に反映されず、そうなると、被災者生活再建制度による支援(全壊の場合には最高300万円の支援)などを受けることすらできない可能性があります。
同じ自然災害の被害で、結果として居住に影響があった場合の金銭的支援に、公平性を保つ必要があると思います。
このままではマズイと思うのです。
今回の県内で死者を伴う土砂崩れが各地に発生したことを受けて、県内の危険個所の再調査や、進捗が遅い警戒区域・特別警戒区域の迅速な指定を求める声が出ています。
しかし、特別警戒区域に指定された場合には具体的に土地の利用制限を伴いますので、危険個所の指定の段階から不動産価値への影響が出てくるはずですし、従前から、制度上の急傾斜事業の実施を望み、予防策を講じたかったにもかかわらず、被災してしまった住民の方もいます。
これから先、指定を進めていくうえで、この問題は避けて通れず、再調査と指定は進めるものの、その先の出口がない方が増えていくことを懸念します。
もちろん、命や安全が優先することは理解できますが、民地とはいえ、せめて、受益者への一定の負担を踏まえながらも、対応する判断の機会を設ける必要があると思います。
具体的には、予防の段階においては、全部の急傾斜を対策の対象とすることは、財政的にも現実的にも不可能に近いため、現行制度のベースを維持することはやむを得ないとしても、せめて、実際に土砂被害が発生した箇所については、災害復旧の場面において、一定の補の負担を伴う形にした選択肢を提供していくことは必要ではないでしょうか。
この選択判断の過程で、ソフト面での安全意識の向上にも繋がると思います。
本県は、台風15号、19号、10月25日の大雨と、立て続けに過去に経験がない規模の被害を受けました。
これを受けて、12月県議会の補正予算案では、470億円規模で、農業ハウス等施設の復旧に対する高い補助率、住戸の一部損壊への支援拡充など、過去の例に捉われない手厚い支援メニューを設けて、復旧・復興を行っていくことしています。
しかし、それだけでは足りません。
先日、担当課には、県内の土砂崩れの発生箇所だけではなく、民地で発生したもので住宅への危険性という観点で、世帯カウントでの調査を依頼しました。
まだ全体の被害規模は分かりませんが、民地内で発生した土砂崩れに対する何らかの支援策の構築に向けて、私の方で出来ることは尽くしていきたいと思います。